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記載の条件は2026年8月28日時点で公式資料を確認したものです。契約前に必ず各事業者の公式サイトで最新の条件をご確認ください。
光回線の解約金を各社の料金表で並べていくと、あることに気づきます。どの事業者も、解約金がおおむね「月額料金1ヶ月分」に収まっているのです。かつては2年契約で1万円台、5年契約で1万6千円台という金額が当たり前でした。それが今はほぼ月額1ヶ月分。事業者どうしが申し合わせたわけでも、競争の結果そうなったわけでもありません。法令が上限を定めているからです。
本記事では、その上限を定めている条文を実際に読み、何が上限に含まれ、何が請求できないのかを整理します。条文の文言は、e-Gov パブリック・コメントで公開されている改正省令の新旧対照表から引用しています。
1. 根拠はどこにあるか
解約金の上限を直接定めているのは、法律本体ではなく省令です。
| 階層 | 名称 | 該当箇所 |
|---|---|---|
| 法律 | 電気通信事業法 | 第27条の2第4号(総務省令への委任) |
| 省令 | 電気通信事業法施行規則 | 第22条の2の13の2 第2号 |
| 施行日 | — | 2022年(令和4年)7月1日 |
施行規則第22条の2の13の2の柱書は、次のようになっています。
法第二十七条の二第四号の総務省令で定める行為は、次に掲げる行為とする。
つまりこの条文は、電気通信事業法第27条の2第4号が「総務省令で定める行為」として委任した禁止行為の中身を書き下したものです。解約金の上限は、事業者に「◯円以下にしなさい」と命じる形ではなく、上限を超えて請求する行為を禁止するという形で定められています。この立て付けは後で効いてきます。
なお、電気通信事業法第27条の2そのものの条文原文は、本記事では確認できませんでした。e-Gov法令検索は本文がスクリプトで描画されるため、記事作成時点では条文テキストを取得できていません。ここで引用している省令の文言は、改正省令案の新旧対照表(e-Gov パブリック・コメント)に掲載されたものです。
2. 第2号の柱書 — 「超える金額を請求すること」
第2号の柱書は次の文言です。
電気通信役務に関する契約の解除に伴い当該電気通信役務の利用者が支払うべき金額として次に定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える金額を請求すること。
読み解くと、構造はこうなります。
- 解約に伴って利用者が支払うべき金額を、イ以下の各号で類型ごとに定める
- その額に法定利率による遅延損害金を加えた金額が上限になる
- その上限を超えて請求する行為が禁止される
禁止されているのは「請求すること」です。約款に高い金額を書いてあること自体ではなく、実際に請求する行為が規制の対象になっています。
3. 第2号ロ — 違約金の上限を定める部分
解約金(違約金)の上限を定めているのは、第2号ロです。
契約の締結から一定期間内に当該契約の変更又は解除を行つたこと(第二十二条の二の十七第二号において「期間内変更等」という。)を理由として求める違約金その他の経済的な負担(第二十二条の二の十七において「違約金等」という。)に関する定め(以下この号、第二十二条の二の十六第一項第一号及び第二十二条の二の十七において「違約金等の定め」という。)がある場合においては、これに基づき請求する当該電気通信役務及び当該有償継続役務の一月当たりの料金に相当する額
括弧書きが多く読みにくいので、定義部分を外して骨格だけ取り出します。
契約の締結から一定期間内に当該契約の変更又は解除を行つたことを理由として求める違約金その他の経済的な負担に関する定めがある場合においては、これに基づき請求する当該電気通信役務及び当該有償継続役務の一月当たりの料金に相当する額
ここで注目すべき文言が3つあります。
「違約金その他の経済的な負担」
名称が「違約金」でなくても構いません。「契約解除料」「解除手数料」「更新月以外の解約に伴う費用」——呼び方を変えても、期間内解約を理由とする経済的な負担であればこの規定の対象になります。名称による回避を封じる文言です。
「一月当たりの料金に相当する額」
これが上限です。「1ヶ月分」ではなく「一月当たりの料金に相当する額」と書かれている点が重要で、実際にその月に請求される額そのものではなく、月額料金に相当する水準という意味になります。
「当該電気通信役務及び当該有償継続役務の」
上限の計算基礎になるのは、解約される電気通信役務と、それに付随する有償継続役務です。これがセット割の扱いにつながります。
4. 「一月当たりの料金」はどう計算するのか
条文だけでは、税込か税抜か、割引適用後か、といった点は決まりません。総務省の「改正電気通信事業法施行規則に関するQ&A(最終改正:令和4年7月1日)」がこれを補っています。
| 論点 | Q&Aの示す扱い | 該当問 |
|---|---|---|
| 税込か税抜か | 税込額で計算する | Q3-2-6 |
| 契約ごとか平均か | 契約単位で適用される | Q3-2-3 |
| セット契約 | 各サービスの月額利用料相当額の合計が上限 | Q3-2-1 |
| 二重請求 | 可能。ただし合計が上限内であること | Q3-2-1 |
特に重要なのがQ3-2-3です。
本規定は契約単位で適用されます。したがって、例えば、加重平均した月額提供料金が3,000円であったとしても、月額利用料相当額が1,000円の利用者に対してこの額の違約金を請求することはできません。
事業者側から見ると、「うちの平均単価は3,000円だから解約金も3,000円」という設計はできません。上限はあくまでその契約の利用者が支払っている月額で決まります。安いプランの利用者には、安い解約金しか請求できないということです。
5. セット割を解除したときの上限
複数サービスをセットで契約している場合、上限は合算されます。Q&Aの具体例(Q3-2-1)はこうです。
| 内訳 | 月額 |
|---|---|
| 本体の通信サービス | 5,000円 |
| オプションA | 1,000円 |
| オプションB | 2,000円 |
| セット割に係る違約金の上限 | 8,000円 |
そして、セット割に係る違約金と、それぞれのサービスに係る違約金を二重に請求すること自体は可能とされています。ただし、
その場合は、違約金の合計額が上限の範囲内である必要があります。
つまり請求の名目をいくつに分けても、合計が8,000円を超えることはできません。名目を分割して総額を膨らませる手法が封じられている形です。
6. キャッシュバック相当額の返納は請求できない
実務上いちばん影響が大きいのがこの点です。Q3-2-4はこう述べています。
キャッシュバック相当額は、第22条の2の13の2第2号に規定されていないため解約時に利用者に請求できません。
論理がはっきりしています。第2号は解約時に請求できる金額を限定列挙しています。列挙されていないものは請求できない。キャッシュバック相当額は列挙されていない。ゆえに請求できない——という組み立てです。
「高額キャッシュバックを受け取ったが、期間内に解約したら全額返せと言われた」という設計は、この規定の下では成り立ちません。ただしこれは解約時の請求についてのルールです。そもそもキャッシュバックの受取条件(開通から◯ヶ月継続していること等)を満たさず、まだ受け取っていない場合は別の話になります。受け取る前の話と、受け取った後に返納を求められる話は、分けて考える必要があります。
7. 工事費残債・撤去費用の扱い
解約時に請求されうる費用として、工事費残債と撤去費用があります。Q&Aは次のように整理しています。
工事費残債(Q3-3-1)
当該「開設工事費残債」は、利用者に対して請求されるものではないため、本規定は適用されません。
撤去費用(Q3-3-2)
同号ハに準じた合理的な額(契約期間に応じて低減した額)であれば同号イに基づき対価として請求することが可能です。
撤去費用は、条文の「ハ」に準じた合理的な額であれば請求できるとされています。ただし本記事では、第2号のハからトまでの条文原文を確認できませんでした。新旧対照表から取得できたのはイとロの全文で、ハ以下は「ハからトまでに規定する費用」という参照の形でしか確認できていません。したがって撤去費用の上限がどのように定まるかについて、本記事では条文レベルの断定はできません。(推測)ハ以下は工事費や設備費用の類型を定めていると考えられますが、原文未確認です。
8. 実例 — SoftBank光の改定前後
制度が実際の金額をどう動かしたかは、ソフトバンクが公表している改定内容で確認できます。
| プラン/タイプ | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| SoftBank光 2年自動更新・ファミリー | 10,450円 | 5,720円 |
| SoftBank光 2年自動更新・マンション | 10,450円 | 4,180円 |
| SoftBank光 5年自動更新・ファミリー | 16,500円 | 5,170円 |
5年プランのファミリーは16,500円から5,170円へと、3分の1以下になっています。改定後の金額が、その回線種別の月額料金水準とほぼ一致していることを確認してください。これが「一月当たりの料金に相当する額」という条文の文言が現実の料金表に現れた姿です。
なお同ページには、2026年12月1日以降に契約期間満了月を迎える利用者には、料金改定後の解除料(2年自動更新・ファミリーで6,050円、マンションで4,510円、5年自動更新・ファミリーで5,500円)が適用される旨も記載されています。月額料金が改定されれば、その1ヶ月分相当である解約金も連動して動くということです。上限が固定額ではなく月額に連動する設計であることが、ここからも読み取れます。
9. 期間拘束契約の特例 — 附則第2項
改正省令には経過措置があります。附則第2項の文言は次のとおりです。
この省令の施行の日(以下「施行日」という。)の前日において現に締結されている電気通信役務(法第二十六条第一項各号に掲げる電気通信役務に限る。)の提供に関する契約及び当該契約の一部の変更(施行日の前日における当該契約の提供条件において利用者からの申出により変更することができることとされている範囲内で利用者からの申出により行うもの又は利用者の住所の変更その他これに準ずる軽微な変更であつて利用者の利益の保護のため支障を生ずることがないものに限る。)又は更新(当該変更を内容とする契約の更新を含む。)を内容とする契約については、当分の間、この省令による改正後の電気通信事業法施行規則第二十二条の二の十三の二第二号の規定は、適用しない。
長いので、括弧の中身を分解します。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 施行日(2022年7月1日)の前日時点で現に締結されている契約 |
| 効果 | 当分の間、第22条の2の13の2第2号を適用しない |
| 変更が許される範囲 | ①既存の提供条件の範囲内で、利用者の申出により行う変更 ②住所変更その他これに準ずる軽微な変更で、利用者の利益保護に支障がないもの |
| 更新 | 上記の変更を内容とする契約の更新を含む |
つまり、2022年6月30日以前から続いている古い契約は、上限規制の対象外のまま残りうるということです。ただし特例が維持されるのは、変更が上表の範囲内にとどまる場合に限られます。
ここから2つの帰結が出ます。
施行日前の期間拘束なし契約を、施行後に「期間拘束あり」へ変更することは、原則として特例の対象外です。附則が許しているのは「利用者からの申出により変更することができることとされている範囲内」の変更と「軽微な変更」であり、期間拘束の新設はそのどちらにも当たらないためです。
施行日以降に約款が変更されると、当該約款下の全契約者が特例対象から外れるという帰結もあります。新プランの追加などで約款そのものが変更されれば、それは利用者の申出による変更でも軽微な変更でもないからです。
実務上の意味は、こうです。古い契約を持っている人が「自分は上限規制の対象外なのか」を判断するには、契約時期だけでなく、その後に約款変更やプラン変更があったかを確認する必要があります。SoftBank光の例で「契約成立日が2022年7月1日以降」に加えて「2022年7月1日以降にプラン変更・移転・速度変更が完了した場合」や「2025年7月1日以降の契約自動更新時」が適用対象として挙げられているのは、この附則の構造を反映したものと読めます。
まとめ
- 光回線の解約金が各社そろって月額1ヶ月分程度なのは、事業者の判断ではなく、電気通信事業法施行規則第22条の2の13の2第2号ロが上限を定めているためです(2022年7月1日施行)。
- 条文の文言は「当該電気通信役務及び当該有償継続役務の一月当たりの料金に相当する額」。名称が違約金でなくても「その他の経済的な負担」として規制対象になります。
- 上限は契約単位・税込で判定されます。事業者の平均単価ではなく、その利用者の月額で決まります。
- セット契約では各サービスの月額の合計が上限です。名目を分けた二重請求は可能ですが、合計が上限を超えることはできません。
- キャッシュバック相当額の返納は請求できません。第2号に列挙されていないためです。
- 2022年6月30日以前からの契約には附則第2項の特例がありますが、約款変更等があれば特例から外れます。
- 本記事では、法第27条の2第4号の条文原文、および第2号ハ〜トの条文原文を確認できませんでした。撤去費用の上限については条文レベルの断定を避けています。
条文を読むと、このルールが「金額を決める規制」ではなく「請求できる項目を限定列挙する規制」だとわかります。だからキャッシュバックの返納が封じられ、名目の付け替えが効かない。上限額そのものより、この構造のほうが実務への影響は大きいはずです。
出典
| 資料名 | URL | 確認日 |
|---|---|---|
| 総務省「改正電気通信事業法施行規則に関するQ&A(最終改正:令和4年7月1日)」 | https://www.soumu.go.jp/main_content/000824364.pdf | 2026-08-28 |
| 総務省 電気通信消費者情報コーナー「消費者保護ルール」 | https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/shohi.htm | 2026-08-28 |
| e-Gov パブリック・コメント「電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(案)等に対する意見募集の結果及び情報通信行政・郵政行政審議会からの答申」(新旧対照表・附則を含む) | https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000231552 | 2026-08-28 |
| e-Gov法令検索「電気通信事業法施行規則」 | https://laws.e-gov.go.jp/law/360M50001000025/ | 2026-08-28(本文テキスト取得不可) |
| ソフトバンク「2022年7月1日の電気通信事業法改正にともなう各種改定について」 | https://www.softbank.jp/internet/cancellation-fee/ | 2026-08-28 |
| 総務省「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」 | https://www.soumu.go.jp/main_content/001073287.pdf | 2026-08-28 |