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記載の条件は2026年8月28日時点で公式資料を確認したものです。契約前に必ず各事業者の公式サイトで最新の条件をご確認ください。
「光回線の乗り換えにかかる費用は平均◯万円」——比較サイトでよく見る数字です。しかし、その根拠はどこにあるのでしょうか。
本記事では、総務省が公開している資料だけを読んで、光回線の乗り換えコストがどこまで公的に裏づけられるのかを検証しました。結論を先に書くと、「平均乗り換えコスト」という統計は総務省の公開資料には存在しません。ただし、費用項目ごとに見ると、公的に確定しているものと、確認できないものがはっきり分かれます。その線引きを示すことが本記事の目的です。
1. 乗り換えで発生しうる費用の6項目
まず枠組みを整理します。光回線を A社から B社へ乗り換えるとき、理論上発生しうる費用は次の6つです。
| # | 費用項目 | 発生するタイミング |
|---|---|---|
| 1 | 解約金(違約金) | A社の契約解除時 |
| 2 | 工事費残債 | A社の契約解除時 |
| 3 | 回線撤去費用 | A社の設備撤去時 |
| 4 | 新規契約の事務手数料 | B社の契約時 |
| 5 | 新規工事費 | B社の開通工事時 |
| 6 | 期間の重複による二重払い | A社解約日とB社開通日がずれる期間 |
この6項目それぞれについて、総務省資料で数値が確認できるかを見ていきます。
2. 項目別・公的データの有無
先に一覧で示します。
| 費用項目 | 公的資料での確認状況 |
|---|---|
| 1. 解約金 | 上限額が法令で確定(月額料金1ヶ月分相当)。ただし平均実額の統計は確認できず |
| 2. 工事費残債 | 規制上の位置づけはQ&Aで確認できたが、金額の統計は確認できず |
| 3. 回線撤去費用 | 規制上の位置づけは確認できたが、金額の統計は確認できず |
| 4. 新規契約の事務手数料 | 光回線については確認できず(携帯電話は確認可) |
| 5. 新規工事費 | 確認できず |
| 6. 二重払い | 確認できず |
6項目のうち、金額が公的に確定していると言えるのは1の上限額だけです。以下、順に根拠を示します。
3. 解約金 — ここだけは法令で上限が確定している
解約金は、電気通信事業法施行規則第22条の2の13の2第2号ロによって上限が定められています。条文の文言は次のとおりです。
契約の締結から一定期間内に当該契約の変更又は解除を行つたことを理由として求める違約金その他の経済的な負担に関する定めがある場合においては、これに基づき請求する当該電気通信役務及び当該有償継続役務の一月当たりの料金に相当する額
2022年7月1日施行です。総務省「電気通信事業分野における消費者保護の取組について」(令和8年2月・総務省消費者契約適正化推進室)でも、2022年の措置として次のように整理されています。
月額利用料を超える違約金等の上限額を超える請求をすることを禁止する旨を規定(2022年7月施行)
つまり、光回線の月額が5,000円なら解約金の上限は5,000円程度、4,000円なら4,000円程度です。「平均解約金」を調べる必要はなく、自分の契約の月額を見れば上限がわかります。これは統計ではなく法令なので、比較サイトの平均値より確実です。
ただし注意点が2つあります。ひとつは、これは上限であって実額ではないこと。上限より低い設定も当然ありえます。もうひとつは、2022年6月30日以前から継続している契約には附則第2項の経過措置があり、上限規制の対象外である場合があることです。
なお、実際に請求された解約金の平均額という統計は、総務省資料では確認できませんでした。
4. 工事費残債と撤去費用 — 位置づけは確認できたが金額は不明
総務省「改正電気通信事業法施行規則に関するQ&A(最終改正:令和4年7月1日)」には、この2項目に関する問答があります。
工事費残債(Q3-3-1)
当該「開設工事費残債」は、利用者に対して請求されるものではないため、本規定は適用されません。
撤去費用(Q3-3-2)
同号ハに準じた合理的な額(契約期間に応じて低減した額)であれば同号イに基づき対価として請求することが可能です。
撤去費用については「契約期間に応じて低減した額」という考え方が示されています。長く使うほど請求できる額が下がるという設計です。ただし、具体的にいくらが「合理的な額」なのかを示す金額基準は、確認した資料の中にはありませんでした。
「電気通信事業法第27条の3の施行状況の検討」(総務省)でも、解約時に請求可能な項目として「固定インターネットの工事費等」が列記されていることは確認できましたが、金額に関する記述はテキストとして確認できませんでした。
したがって、工事費残債と撤去費用について「平均◯円」と書ける公的根拠は、本記事では見つけられませんでした。
5. 事務手数料 — 携帯電話は追えるが、光回線は追えない
興味深いことに、携帯電話の乗り換え手数料については総務省資料に具体的な金額があります。「電気通信事業法第27条の3の施行状況の検討」から確認できたのは次の内容です。
| 費用 | 制度改正前 | 制度改正後 |
|---|---|---|
| MNP転出手数料(乗換え元) | 3,000円 | 0円(ドコモ・KDDI・ソフトバンク) |
| 契約事務手数料(乗換え先) | 3,000円 | 0円〜(ahamo・povo・LINEMOは0円) |
同資料には、大手携帯会社等が提供する主な移動電気通信サービスについて「違約金等の上限は1000円(税抜)」「期間拘束2年まで、違約金の上限1,000円等」という記述もあります。携帯電話については、上限が定額(1,000円)で定められている点が光回線と異なります。
一方で、光回線の新規契約事務手数料について、総務省資料で金額を確認することはできませんでした。携帯電話は乗換え促進が政策課題として明示的に扱われてきたため統計と規制が整備されている一方、固定回線(FTTH)については同等の金額データが公開資料に見当たらない、という非対称があります。
6. 新規工事費と二重払い — 公的資料では確認できなかった
新規工事費については、総務省資料で平均額を示すデータを確認できませんでした。事業者ごとの工事費は各社の料金表に掲載されていますが、それは一次資料としては各社の約款・料金表にあたるものであり、総務省の統計ではありません。
期間の重複による二重払いについても同様です。乗り換え時に旧回線と新回線が何日間重複するか、その平均日数はどの程度かというデータは、確認した資料の中にはありませんでした。
(推測)二重払いの実額は、新回線の開通工事の待ち日数に左右されるため、地域差・季節差が大きく、全国平均として意味のある数値になりにくいことが背景にあると考えられます。ただしこれは筆者の推測であり、公的資料に根拠はありません。
7. 苦情・相談件数から見える実態
金額の統計はなくても、苦情・相談の統計からは乗り換えをめぐる実態が読み取れます。
全体の件数
総務省「電気通信事業分野における消費者保護の取組について」(令和8年2月)によれば、電気通信サービスに関する苦情相談件数(総務省および独立行政法人国民生活センターで把握している数字の合計)は次のとおりです。
| 年度 | 件数 |
|---|---|
| 2015年度 | 90,668件 |
| 2024年度 | 69,448件 |
同資料は「苦情相談件数は、この10年間で2割以上減少」としつつ、「一方で、苦情相談件数は依然として年間7万件程度と高い水準」と評価しています。減ってはいるが高止まりしている、という総務省自身の認識です。
FTTHサービスの苦情の中身
同資料には、FTTHサービスの苦情相談について、内容の内訳が示されています。
| 苦情相談の項目・観点(上位3つ) | 割合 |
|---|---|
| 勧められて新規契約又は事業者変更 | 61.5% |
| 解約の条件・方法 | 34.3% |
| 通信料金の支払(心当たりのない請求等) | 11.8% |
そして、苦情相談の要因となったチャネル・応対場所等は次のとおりです。
| チャネル | 割合 |
|---|---|
| 電話勧誘 | 64.5% |
| 訪問販売 | 17.7% |
この2つの表は、乗り換えコストを考えるうえで示唆的です。FTTHの苦情の6割以上が「勧められて新規契約又は事業者変更」に関するもので、そのきっかけの6割以上が電話勧誘です。つまり光回線のトラブルの中心は、自分で調べて乗り換えたケースではなく、勧誘されて乗り換えたケースにあります。
さらに「解約の条件・方法」が34.3%を占めています。解約金の上限が法令で定められた後も、解約にまつわる苦情は3件に1件の割合で発生し続けているということです。上限規制は金額を抑えましたが、条件のわかりにくさや手続きの問題までは解消していない、と読めます。
サービス別の受付件数
総務省が受け付けた苦情相談の件数は、令和4年度で次のとおりです(総務省「令和4年度における電気通信サービスの苦情相談の概要」)。
| サービス区分 | 令和4年度 | 前年度 |
|---|---|---|
| 移動通信(MNO) | 8,545件 | 9,324件 |
| FTTH | 4,531件 | 3,180件 |
| 移動通信(MVNO) | 946件 | 1,142件 |
| 固定電話全体 | 751件 | 1,139件 |
| プロバイダ | 117件 | 142件 |
| 総受付件数 | 17,654件 | 18,289件 |
全体では前年度から635件(3.5%)減少していますが、FTTHだけは3,180件から4,531件へと増加しています。他の区分が軒並み減少している中でFTTHが増えている点は、注目に値します。
8. では、乗り換えコストはどう見積もればよいか
公的な平均値がない以上、平均値を探すより、自分の契約について個別に確定させるほうが確実です。手順は次のようになります。
| 項目 | 確認先 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 解約金 | 現契約の約款・料金表 | 法令上限は月額1ヶ月分相当。実額は約款で確認 |
| 工事費残債 | 現契約のマイページ・請求明細 | 残り何回・いくらかを確認 |
| 撤去費用 | 現契約の約款 | 契約期間に応じて低減する設計かを確認 |
| 事務手数料 | 乗り換え先の料金表 | 契約時に一度だけ発生 |
| 新規工事費 | 乗り換え先の料金表 | 分割払い・実質無料の条件を確認 |
| 二重払い | 開通予定日と解約希望日 | 重複日数×旧回線の日割り/月額 |
このうち解約金だけは、約款を見る前に上限がわかります。月額料金を見れば、それを超える請求はできないと確定しているからです。逆に言えば、残る5項目は公的な目安がないため、必ず各社の料金表で個別に確認する必要があります。
比較サイトが「平均◯万円」と示している数字は、公的統計ではありません。本記事で確認した限り、総務省は光回線の乗り換えコストの平均額を公表していません。その種の数値を見かけたときは、算出根拠が示されているかを確認することをおすすめします。
まとめ
- 総務省の公開資料に、光回線の「平均乗り換えコスト」という統計は存在しません(2026年8月28日時点で確認した範囲)。
- 6つの費用項目のうち、公的に金額が確定しているのは解約金の上限だけです。電気通信事業法施行規則第22条の2の13の2第2号ロにより「一月当たりの料金に相当する額」が上限とされています。
- 工事費残債・撤去費用は、Q&Aで規制上の位置づけを確認できましたが、金額の統計は確認できませんでした。
- 光回線の新規事務手数料・新規工事費・二重払いについては、公的資料で数値を確認できませんでした。携帯電話については MNP転出手数料3,000円→0円 などの数値が確認できるという非対称があります。
- 苦情相談件数は2015年度90,668件から2024年度69,448件へ2割以上減少したものの、総務省は「依然として年間7万件程度と高い水準」としています。
- FTTHの苦情は「勧められて新規契約又は事業者変更」61.5%、「解約の条件・方法」34.3%が上位で、きっかけは電話勧誘64.5%・訪問販売17.7%です。
- 総務省受付分では、令和4年度に全体が3.5%減少する中、FTTHのみ3,180件→4,531件と増加しました。
公的データがない項目について「平均◯円」と断定することは本記事ではしません。かわりに、どの項目がどの資料で裏づけられ、どの項目が裏づけられないかを示しました。見積もりは、上限が法令で確定している解約金を起点に、残りを各社の料金表で個別に埋めていくのが確実です。
出典
| 資料名 | URL | 確認日 |
|---|---|---|
| 総務省 消費者契約適正化推進室「電気通信事業分野における消費者保護の取組について」(令和8年2月) | https://www.soumu.go.jp/main_content/001069662.pdf | 2026-08-28 |
| 総務省「令和4年度における電気通信サービスの苦情相談の概要」(報道資料) | https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban08_03000414.html | 2026-08-28 |
| 総務省「令和4年度における電気通信サービスの苦情相談の概要」(本体資料) | https://www.soumu.go.jp/main_content/000905805.pdf | 2026-08-28 |
| 総務省「電気通信事業法第27条の3の施行状況の検討」 | https://www.soumu.go.jp/main_content/000842225.pdf | 2026-08-28 |
| 総務省「消費者保護ルールの現状と課題」 | https://www.soumu.go.jp/main_content/000914681.pdf | 2026-08-28(件数は図版のためテキスト抽出不可) |
| 総務省「改正電気通信事業法施行規則に関するQ&A(最終改正:令和4年7月1日)」 | https://www.soumu.go.jp/main_content/000824364.pdf | 2026-08-28 |
| e-Gov パブリック・コメント「電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(案)等に対する意見募集の結果及び情報通信行政・郵政行政審議会からの答申」(新旧対照表) | https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000231552 | 2026-08-28 |
| 総務省 電気通信消費者情報コーナー「消費者保護ルール」 | https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/shohi.htm | 2026-08-28 |